製法特許

(11)【特許番号】特許第4472022号(P4472022)
(24)【登録日】平成22年3月12日(2010.3.12)
(45)【発行日】平成22年6月2日(2010.6.2)
(54)【発明の名称】水素ガス含有炭酸カルシウム及びその製造方法

【請求項の数】

11
(21)【出願番号】特願2009-281238(P2009-281238)
(22)【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
(73)【特許権者】
【氏名又は名称】株式会社ENAGEGATE、花岡 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】花岡 孝吉、久保 英雄
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【要約】
【課題】
担体に含有される水素ガス量を高め、且つ水素ガス含有量を一定範囲に保ち、食品としての安全性が十分に確保される原料で構成される水素ガス含有炭酸カルシウム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
沈降炭酸カルシウムに水素含有化合物を保持させて焼成することで、前記沈降炭酸カルシウムの細孔に水素ガスを含有させ、且つ含有する水素ガスの量を一定に保つことが出来る。
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(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

沈降炭酸カルシウムと、
前記沈降炭酸カルシウムの粒子に保持された水素ガスと、
から成る水素ガス含有炭酸カルシウムであって、
前記沈降炭酸カルシウム1gあたりに、25℃において1~50μLの水素ガスが保持されて成る水素ガス含有炭酸カルシウム。

【請求項2】

沈降炭酸カルシウムの平均粒子径が1~10μmである請求項1に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【請求項3】

沈降炭酸カルシウムの比表面積が0.5~2.5m2/gである請求項1に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【請求項4】

水素ガスが、沈降炭酸カルシウムに保持させた分子量400以下の水素化合物の熱分解により生成した水素ガスである請求項1に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【請求項5】

沈降炭酸カルシウムが予め200~500℃で1~5時間熱処理された沈降炭酸カルシウムである請求項1に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【請求項6】

水素化合物が、エタノール、分子量400以下のポリエチレングリコール、単糖類、二糖類、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸から成る群から選択される1又は2以上である請求項1に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【請求項7】

請求項1に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムを添加して成る食品及び栄養補助食品。

【請求項8】

分子量400以下の水素化合物を沈降炭酸カルシウムに付着させる工程と、
前記水素化合物の水溶液が付着される沈降炭酸カルシウムの水分量を1%以下とする工程と、
前記水素化合物が付着される沈降炭酸カルシウムを250~400℃で10分間~3時間焼成することにより水素化合物を熱分解させて水素ガスを発生させ、水素ガスを保持した沈降炭酸カルシウムの粒子を得る工程と、
を有する水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。

【請求項9】

沈降炭酸カルシウムに付着させる工程で用いる沈降炭酸カルシウムが200~500℃で1~5時間熱処理された沈降炭酸カルシウムである請求項8に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。

【請求項10】

水素化合物が、エタノール、分子量400以下のポリエチレングリコール、単糖類、二糖類、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸から成る群から選択される1又は2以上である請求項8に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。

【請求項11】

水素化合物の水溶液の濃度が0.1~0.5(mol/L)である請求項8に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】

【0001】

本発明は、水素ガスを含有した炭酸カルシウムに関する。より詳しくは、水素ガスの含有量が安定した水素ガス含有炭酸カルシウム及びその製造方法に関する。
【背景技術】

【0002】

非特許文献1と2とに記載されているように、水素ガスを体内に取り入れ、生体に対して有害なフリーラジカルと水素ガスとを反応させて疾病の改善をはかろうとする試みがなされている。水素ガスはフリーラジカルであるヒドロキシラジカルと反応して、生体に対して無害な水を生成することは良く知られている。以下の式(1)で示すように、ヒドロキシラジカルは水素原子が持つプロトンと電子を供与されて水となり無毒化される。

【0003】

【数1】

【0004】

非特許文献1および2には、水素ガスを血中に導入する場合、水素ガスは脳まで到達し、脳内の虚血・再灌流時の活性酸素による様々な弊害を改善することが記載されている。しかし、活性酸素と反応するまでの間に水素ガスが消失ないし大部分が消費されてしまうことがある。そのため、上記弊害を改善する目的を達成することが困難となることもある。また、水素ガスをそのまま血中に取り入れる方法はドラッグデリバリーという観点からは必ずしも理想的な方法とはいえない。

【0005】

また、水素ガスを日常的に簡単に摂取するという観点から、水素ガスが溶解している水を飲用することが考えられる。しかし、水素ガスの水に対する溶解度は低い。25℃、1気圧の条件では、水素ガスは水に対して1.55(mg/L)しか溶解しない。さらに、水素ガスの水に対する溶解量は、ヘンリーの法則に従い、気相中の水素ガスの分圧に比例する。そのため、水素ガスの分圧が小さい場合、即ち気相中に水素ガスが殆ど存在しない場合(例えば、大気中)は、水中に水素ガスを溶解させても、水素ガスは短時間のうちに蒸発逸散してしまう。そのため、水素ガスは水中に長く滞留させることができない。従って、水中に実質的に必要な量の水素ガスを溶存させることは出来ない。

【0006】

特許文献1及び2には、ゼオライトや珊瑚、牡蠣殻等の素材を原料とする粉末状の担体に水素ガスを担持させる方法が記載されている。ゼオライトは主に二酸化ケイ素や酸化アルミニウムから構成され、珊瑚、牡蠣殻は炭酸カルシウムと蛋白質を主としたコンキオリン等とから構成されている。これらの素材は、その構造中に細孔を有しているものがある。また、これらの素材は、その構造中に有機物や水が取り込まれており、熱処理によって有機物や水を除去し、多数の細孔や間隙を形成させてポーラス状とすることが出来る。そのため、前記素材は、ガス状物質の含有材の製造原料として広く利用されている。

【0007】

特許文献1には、珊瑚、牡蠣殻を原料として製造する粉末状の担体に水素ガスを担持させる方法が記載されている。珊瑚や牡蠣殻は、これらの成長生育過程で、骨格をなす炭酸カルシウムの層間にコンキオリンを含む蛋白質などの有機物を不可避的に蓄積する。そのため、珊瑚や牡蠣殻を還元的雰囲気下で焼成することによって、有機物の熱分解生成物である水素ガスが生じる。この水素ガスは、炭酸カルシウムの細孔内に含有される。このようにして得られる粉末は、水中で水素ガスを徐々に拡散放出させることが出来る。そのため、前記水素を含有した粉末を生体に取込めば、水素ガスをターゲットまで確実に届けることができる。

【0008】

特許文献2には、天然多孔質体である天然ゼオライトを非酸化雰囲気で焼成することにより、層間に不可避的に存在する有機物を低分子化し、低分子化によって発生する水素ガスを天然ゼオライトの細孔に含有させる技術が開示されている。天然ゼオライトは、ゼオライトの形成過程で不純物として有機物が取り込まれていることがある。このゼオライトを非酸素雰囲気、即ち還元的雰囲気で焼成することにより取込まれている有機物が熱分解し、分解生成物である水素ガスは細孔内に保持される。

【0009】

ゼオライトは、その構造中に直径1nm以下の細孔を有している。しかし、ゼオライトに高圧下で外部から水素ガスを圧入することは困難である。珊瑚や牡蠣殻は、その構造中にはコンキオリンなどの有機物が存在している。珊瑚や牡蠣殻の場合も同様に、高圧下で水素ガスを圧入することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】

【0010】

【特許文献1】特許4245655号公報
【特許文献2】特許4159598号公報
【非特許文献】

【0011】

【非特許文献1】Brain Research 1256 (2009) 頁129-137
【非特許文献2】Nature Medicine、2007 5/8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】

【0012】

これらの天然由来のゼオライトや珊瑚、牡蠣殻は、産出場所や成長条件の違いにより、層間に含まれる有機物の量や組成が一定ではない。そのため、これらを焼成する場合、有機物の熱分解で生じる水素ガスが担体に保持される量は必ずしも一定範囲に収らない。従って、得られる製品の水素含有量等の品質を一定に保つことは難しい。

【0013】

健康補助食品として用いる場合においては、水素ガスを含有させる担体は食品として安全性が確保されたものでなくてはならない。そのため、担体の種類は限定される。

【0014】

本発明の課題は、製品の品質を一定に保ち、食品としての安全性が十分に確保される水素ガス含有炭酸カルシウム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】

【0015】

本発明者らは、製品の品質を安定させるために、炭酸カルシウムの層間等において水素源となる有機物の量と組成を制御する方法を検討した。より具体的には、炭酸カルシウムに水素化合物を保持させる方法を検討した。その結果、天然物由来のゼオライトや、珊瑚や牡蠣殻、卵殻カルシウム等由来の重質炭酸カルシウムでは、これらの細孔や間隙に、水素化合物の分子が浸透せず、これを焼成しても十分な量の水素ガスが保持されなかった。一方、晶析法により生成される沈降炭酸カルシウムは、水素化合物を多く保持させることができることを見出した。そして、前記沈降炭酸カルシウムに水素含有化合物を保持させて焼成することで、前記沈降炭酸カルシウムに含有する水素ガスの量を一定に保つことが出来る事を見出し、本発明を完成するに至った。

【0016】

上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。

【0017】

〔1〕
沈降炭酸カルシウムと、
前記沈降炭酸カルシウムの粒子に保持された水素ガスと、
から成る水素ガス含有炭酸カルシウムであって、
前記沈降炭酸カルシウム1gあたりに、25℃において1~50μLの水素ガスが保持されて成る水素ガス含有炭酸カルシウム。

【0018】

〔2〕
沈降炭酸カルシウムの平均粒子径が1~10μmである〔1〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【0019】

〔3〕
沈降炭酸カルシウムの比表面積が0.5~2.5m2/gである〔1〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【0020】

〔4〕
水素ガスが、沈降炭酸カルシウムに保持させた分子量400以下の水素化合物の熱分解により生成した水素ガスである〔1〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【0021】

〔5〕
沈降炭酸カルシウムが予め200~500℃で1~5時間熱処理された沈降炭酸カルシウムである〔1〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【0022】

〔6〕
水素化合物が、エタノール、分子量400以下のポリエチレングリコール、単糖類、二糖類、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸から成る群から選択される1又は2以上である〔1〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウム。

【0023】

〔7〕
〔1〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムを添加して成る食品及び栄養補助食品。

【0024】

〔8〕
分子量400以下の水素化合物を沈降炭酸カルシウムに付着させる工程と、
前記水素化合物の水溶液が付着される沈降炭酸カルシウムの水分量を1%以下とする工程と、
前記水素化合物が付着される沈降炭酸カルシウムを250~400℃で10分間~3時間焼成することにより水素化合物を熱分解させて水素ガスを発生させ、水素ガスを保持した沈降炭酸カルシウムの粒子を得る工程と、
を有する水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。

【0025】

〔9〕
沈降炭酸カルシウムに付着させる工程で用いる沈降炭酸カルシウムが200~500℃で1~5時間熱処理された沈降炭酸カルシウムである〔8〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。

【0026】

〔10〕
水素化合物が、エタノール、分子量400以下のポリエチレングリコール、単糖類、二糖類、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸から成る群から選択される1又は2以上である〔8〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。

【0027】

〔11〕
水素化合物の水溶液の濃度が0.1~0.5(mol/L)である〔8〕に記載の水素ガス含有炭酸カルシウムの製造方法。
【発明の効果】

【0028】

本発明による方法で得られる水素ガス含有炭酸カルシウムは、天然由来のゼオライトや珊瑚、牡蠣殻を焼成して得られるものと比べて水素ガス含有量を5~10倍とすることが出来る。そのため、フリーラジカルに対するスカベンジャー効果が高い。

【0029】

本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、保持されている水素ガスが拡散消失しにくい。そのため、長期間にわたってその効果を維持できる。
また、本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムに、水素源としての水素化合物を人為的に付着させる。よって、珊瑚や牡蠣殻を原料とする重質炭酸カルシウムのように水素源の有機化合物の組成や量が産地等により変化しない。そのため、水素ガス含有炭酸カルシウムの水素ガス含有量を一定とすることができ、製品の品質が安定する。

【0030】

本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの細孔内で熱分解が行われる。細孔内は低酸素濃度となるため、窒素ガス等の還元雰囲気で処理しなくても良く、製造コストや簡便さに優れている。

【0031】

本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、水素源となる有機物が特定されているため、食品としての安全性が高く保持される。また、加熱処理をするので別途の殺菌処理をしなくてもよく、衛生上極めて優れている。
【図面の簡単な説明】

【0032】

【図1】本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムの粒子の水中における状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】

【0033】

(沈降炭酸カルシウム)
本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムの製造に用いる炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)である。沈降炭酸カルシウムの純度は98.5%以上であることが好ましい。例えば、日本薬局方第15版に収載される沈降炭酸カルシウムを用いることが出来る。沈降炭酸カルシウムの製造方法はどのような方法であっても良く、例えば炭酸ガス反応法、可溶性塩反応法で得られる沈降炭酸カルシウムを用いることが出来る。

【0034】

本発明に用いる沈降炭酸カルシウムは、高純度の物を用いることが好ましい。高純度の物であっても、さらに精製して用いてもよい。精製は大気中で200~500℃で1~5時間程度加熱する事により行う。加熱により、沈降炭酸カルシウムに付着する有機物は除去される。

【0035】

沈降炭酸カルシウムの一次粒子の大きさは0.1~20μmで、0.5~10μmが好ましく、1~5μmがより好ましい。20μmよりも大きいと、水素化合物が中心まで浸透しずらくなり水素ガスの含有量が一定しない。0.1μmよりも小さいと、水素化合物が内部に保持される量が少なくなり水素ガスの含有量が減少する。

【0036】

沈降炭酸カルシウムの比表面積は0.5~2.5m2/gである事が好ましい。0.5m2/gよりも小さいと、水素ガスの含有量が極端に少なくなる。2.5m2/gよりも大きいと、細孔が多くなり水素化合物の溶液が浸透しにくくなる。

【0037】

(水素化合物)
本発明に用いる水素化合物は、分子量400以下の水素化合物を用いる。この水素化合物は、水素源となる物であれば、どのような物でも用いることが出来る。サプリメント等のように経口的に摂取する場合には、熱分解により生体に対して有害な物質を残存させない物を用いる。例えば、D-グルコースやD-フラクトース等の単糖類、マルトースやセルビオース、サッカロース等の二糖類、シュウ酸やマロン酸、グリコース酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、エタノール、ポリエチレングリコール等のアルコール類が挙げられる。これら水素化合物は不純物を実質的に含まない物を用いることが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組合わせて用いても良い。

【0038】

(水素化合物水溶液の沈降炭酸カルシウムへの浸透付着)
沈降炭酸カルシウムに水素化合物を付着させる方法としては、液状の水素化合物をそのまま含浸させても良く、又は、水や溶剤等の溶液として含浸させても良い。エタノール等のアルコールはそのまま又は水溶液の状態で含浸させることが出来る。アルコール以外の水素化合物は溶液として含浸させることが好ましい。その濃度は、0.1~0.5mol/Lが好ましい。

【0039】

含浸は水素化合物水溶液中に沈降炭酸カルシウムを浸漬することにより行うことが好ましい。浸漬の際には、沈降炭酸カルシウム全体に水素化合物水溶液が十分に浸る量の水素化合物水溶液を用いる。浸漬時間は1時間程度であれば充分であり、それ以上浸漬しても沈降炭酸カルシウムに対する水素化合物の付着量はあまり変わらない。浸漬温度は特に制限がない。

【0040】

(水素化合物水溶液の浸透付着した沈降炭酸カルシウムの乾燥)
上記水素化合物水溶液の浸透付着した沈降炭酸カルシウムは、濾過して余分な水溶液を除去した後、乾燥させることにより、沈降炭酸カルシウムに水素化合物が保持される。乾燥方法は、真空乾燥や噴霧乾燥、凍結乾燥、ドラムドライヤによる乾燥等、公知の方法で行うことが出来る。この際、沈降炭酸カルシウムの残存水分は1%以下とすることが好ましい。

【0041】

(水素化合物が保持された沈降炭酸カルシウムの焼成)
上記水素化合物が保持された沈降炭酸カルシウムは焼成することにより、水素化合物が熱分解され、発生した水素ガスが沈降炭酸カルシウム粒子に含有される。焼成温度は、250~400℃で、350℃程度が好ましい。この範囲の温度に加熱することで水素化合物は加熱分解され、水素ガスを発生する。発生した水素ガスは沈降炭酸カルシウム粒子、特に粒子の細孔部に物理的に含有する。焼成時間は焼成量や焼成に用いる装置によっても異なるが、およそ10分間~3時間である。例えば、水素化合物が保持された沈降炭酸カルシウム100gを焼成する場合、およそ2時間が好ましい。

【0042】

上記細孔はマイクロポアからメゾポアの大きさと推定できる。焼成時、細孔内の水素化合物は細孔外部から酸素が供給されにくくなるため、低酸素雰囲気状態となり乾留状態で熱分解され低分子化されるものと考えられる。細孔内の水素化合物は細孔内で低分子化されて最後に水素ガスが残り、細孔内に物理的に含有されるものと考えられる。

【0043】

(水素ガス含有炭酸カルシウム)
本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウム粒子1gあたりに少なくとも1μL以上、好ましい実施形態においては12.5~50μLの水素ガスを保持している(25℃)。この水素ガス含有炭酸カルシウムは、保持された水素ガスが大気中において容易に拡散しない。例えば、開放系における乾燥空気中においては室温で製造後1年間以上、水素ガスの含有量が変化しない。同条件下、製造後数時間で水素ガスが消失する物は本発明の範囲外である。

【0044】

本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、1日あたり300~600mg(カルシウム換算)を摂取することが好ましい。本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、顆粒剤やカプセル剤に加工してサプリメントとしても良いし、パンやクッキー等の食品に添加しても良い。本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、100℃程度に加熱しても機能を損わない。

【0045】

本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、水中に存在させた場合、水素ガスは液相中で細孔内と細孔外の濃度差により拡散放出される。そのため、水素ガスは水素ガスの担体である沈降炭酸カルシウムの粒子表面から順次液相に拡散される。沈降炭酸カルシウムの粒子表面では水素ガス濃度は飽和点に達しているか過飽和状態になっているものと考えられる。局所的には水素ガス濃度は極めて高くなっていると推定される。従って、水素ガスは沈降炭酸カルシウム1g当り1μL(25℃)以上含有されていれば、活性酸素を打ち消すに充分な量であるといえる。

【0046】

図1は、本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムの粒子を水中に存在させた状態を示す概念図である。100は本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムの粒子であり、炭酸カルシウムの結晶11から構成されている。水素ガス含有炭酸カルシウムの粒子には細孔13が形成されており、その細孔内には水素ガス15が含有している。水中においては、水素ガス15は細孔内外の水素濃度差により拡散放出され、粒子100の表面に移動する。粒子表面の水素ガス15は、粒子100の周辺の水の水素ガス濃度を上昇させ、水素ガスが飽和ないし過飽和となった水の層17を形成させる。層17中の水素は層17を通って順次水中に拡散していく。よって、本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムは、摂取前又は摂取後に水と接触させることにより、極めて高い濃度の水素ガスを体内に取入れることが出来る。

【0047】

本発明による該炭酸カルシウムへの水素ガス含有量は、一定量の該水素ガス含有炭酸カルシウムを密閉容器に入れた一定量の純水に溶かし、一定容積の気相中に放出した水素ガスを一定時間ごとに採取してガスクロマトグラフィ法で水素を定量することで定量することができる。
【実施例】

【0048】

(実施例1)
沈降炭酸カルシウム(局方)100gを食用エタノール(99.5vol%)200mLに浸漬した。浸漬温度は室温で、浸漬時間は1時間とした。浸透後、濾過処理をしてエタノールとエタノールを保持した該炭酸カルシウムとを分離した。エタノールを保持した該炭酸カルシウムを風乾後、350℃で2時間焼成して細孔あるいは微細間隙内に浸透したエタノールを熱分解し、熱分解生成物として水素ガスを沈降炭酸カルシウムに含有させて水素ガス含有炭酸カルシウムを得た。なお、原料となる沈降炭酸カルシウムを予め350℃で2時間焼成して細孔内あるいは微細間隙内の有機不純物等を除去しておく場合であっても、上記操作は変らない。

【0049】

処理した該沈降炭酸カルシウム3.0gを33mlの容器に取り、純水15mlを加えて36℃で加温後、容器を激しく振って容器下部に沈殿した沈降炭酸カルシウム粉体を分散させたのち気相0.5mlをガスクロマトグラフィに充填して水素ガスの定量分析を行った。本分析の分析条件は以下の通りである。分析結果を表1に示した。

【0050】

ガスクロマトグラフィ分析条件
ガスクロマトグラフィ:島津 GC14AT
データ処理装置:島津クロマトパック C-R7A
カラム:モレキュラーシーブ-5A 60-80メッシュ、3m、
カラム温度:75℃
検出器:TCD、
検出器温度:70℃、
電流値:80mA
キャリアガス:アルゴン、
入口圧:250kPa、
アッテネーション:20、
試料注入量:0.5ml、PA=8

【0051】

(比較例1)
重質炭酸カルシウム3.0gを33mlの容器に取り、純水15mlを加えて36℃で加温後、容器を激しく振って容器下部に沈殿した重質炭酸カルシウム粉体を分散させたのち気相0.5mlをガスクロマトグラフィに充填して水素ガスの定量分析を行った。本分析の分析条件は実施例1と同様である。分析結果を表1に示した。

【0052】

(比較例2)
卵殻カルシウム3.0gを33mlの容器に取り、純水15mlを加えて36℃で加温後、容器を激しく振って容器下部に沈殿した卵殻カルシウム粉体を分散させたのち気相0.5mlをガスクロマトグラフィに充填して水素ガスの定量分析を行った。本分析の分析条件は実施例1と同様である。分析結果を表1に示した。

【0053】

(比較例3)
実施例1の沈降炭酸カルシウムを、珊瑚由来の重質炭酸カルシウムに変え、水素化合物の浸漬は行わない他は同様に操作して水素ガス含有炭酸カルシウムを得た。この水素ガス含有炭酸カルシウムの水素ガスの定量分析を行った。本分析の分析条件は実施例1と同様である。分析結果を表1に示した。

【0054】

(比較例4)
実施例1の沈降炭酸カルシウムを、ゼオライト粉(局方)に変えた他は同様に操作して水素ガス含有ゼオライトを得た。この水素ガス含有ゼオライトの水素ガスの定量分析を行った。本分析の分析条件は実施例1と同様である。分析結果を表1に示した。

【0055】

(比較例5)
300℃で2時間焼成した平均粒径5μmの沈降炭酸カルシウム10gをフラスコに入れ約20000ppm容量濃度の水素ガスを注入して室温で2時間振動させた後1時間静置してから該沈降炭酸カルシウム3.0gを33mlの容器に取り、純水15mlを加えて36℃で加温後、容器を激しく振って容器下部に沈殿した沈降炭酸カルシウム粉体を分散させたのち気相0.5mlをガスクロマトグラフィに充填して水素ガスの定量分析を行った。本分析の分析条件は実施例1と同様である。分析結果を表1に示した。

【0056】

実施例1の沈降炭酸カルシウムの水素ガス含有量は、他の担体である天然由来の重炭酸カルシウムや卵殻カルシウムと比べて48時間後における含有量の比較では重炭酸カルシウムに対して598倍、卵殻カルシウムに対して322倍、ゼオライト粉に対して1495倍と極めて高い量となった。

【0057】

【表1】

【0058】

(実施例2)
実施例1の食用エタノール(99.5vol%)200mLを、0.2(mol/L)D-グルコース水溶液200mLに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、水素ガス含有炭酸カルシウムを得た。本品は実施例1と同様に水素ガスの定量分析を行った。結果を表2に示す。

【0059】

(実施例3)
実施例1の食用エタノール(99.5vol%)200mLを、0.2(mol/L)クエン酸水溶液200mLに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、水素ガス含有炭酸カルシウムを得た。本品は実施例1と同様に水素ガスの定量分析を行った。結果を表2に示す。

【0060】

【表2】

【0061】

水素化合物としてエタノール(分子量46.07)を用いた場合は、D-グルコース(分子量180.16)を用いる場合と比べて水素ガス含有量は約2倍、クエン酸(分子量210.14)を用いる場合と比べて約2.4倍となった。分子量の最も小さいエタノールが最も多い水素ガス含有量を示した。

【0062】

(実施例4)
実施例1で得た水素ガス含有炭酸カルシウム50mgをハードカプセルに充填してサプリメントを得た。このサプリメントは違和感なく服用することが出来た。
【符号の説明】

【0063】

100・・・水素ガス含有炭酸カルシウムの粒子
11・・・炭酸カルシウムの結晶
13・・・細孔
15・・・水素ガス
17・・・水素ガスが飽和ないし過飽和となった水の層

【図面の簡単な説明】

【0032】

【図1】本発明の水素ガス含有炭酸カルシウムの粒子の水中における状態を示す概念図である。

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